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かくほうの腕の動きはスムーズになるはずである。
ところで、競泳の決勝レースでゴールした後、レースの余韻を味わうかのように、ゆっくりと仰向けになったり、背泳ぎで泳ぐ選手をみかける。全身を水中に没して楽に呼吸のできる仰向き姿勢は、緊張した精神のリラックスに効果があるように思える。
例えば、泳ぐといっても記録を競ったり、体力増強を目指して泳ぐのではなく、リフレッシュを目的とした場合、屋外のプールや海で仰向きで水面に浮かぶのは、広い空、輝く太陽、流れる雲などが眺められ、ゆったりとした最高の気分を味わえる。毎日40分ぐらいは泳ぐという脚本家の橋田壽賀子さんと対談したとき、彼女は次のように話してくれた。「はい。バックで泳ぎながらですけど、私の行くプールは、熱海の山の中に建っているんです。だから、大きなガラスの外は全部山。まるで山のなかで泳いでいるようで、上をみると空がきれいなんです。すると、山のなかを泳いだり、空を泳いでいるようで……。そんなとき、心のどこかでストーリーを考えているんですね。これは、私にとってすごくいい時間なんです。」
仰向けに浮かぶとき海水であれば、浮力が強く浮きやすいし、普通の水では両手をからだの左右でカーリングすれば十分浮いていられるし、呼吸も自由にできる。
ところが、初心者は仰向きになると顔を起こしたくなり、それによってからだが沈みがちになる。そんなときは、腹部を突き出すようにして頭部をなるべく水中に没するように指導してあげればよい。こんな気分のよい思いを多くの人たちに味わわせたいものである。

 

 

 

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